研究概要 |
1. ヒトでの眼球運動中枢の分析(文献2,4,5) ヒトの眼球運動中枢が眼球運動のどのタイミングで働くかを検討するため、眼球の反応時間が、頭皮上のどの部位の刺激でどのタイミングで影響されるかを調べた。本実験の基礎として、磁気刺激の手の反応時間に対する影響を解析した所、intersensory facilitationが重要である事が示された(文献2)。さらにf-MRIを併用して、8の字コイルでの刺激点を検討した所、8の字コイルの中心の直下に主とした刺激点があることが示された(文献5)。 これら2点に注意しながら、アンチサッケードに対する磁気刺激の効果を分析した(文献4)。その結果、視標呈示後80ms位ではposterioparietal cortex(PPC)が主として働いていて、約100msでは前頭眼野(FEF)が機能していると判明した。眼球の運動プログラミングにおいて、まずPPCが情報処理をし、その後FEFが働くと考えられた。 2. 二連発磁気刺激による運動野内抑制機構の分析とその病態変化(文献1,3,6) 運動野内での運動のセレクションや様々な運動野の協調などに機能しているとされる、運動野内のGABAを介する抑制機構の解析が二連発刺激を用いて手指筋で行われてきた。運動野内の興奮性システムの違いにより、この抑制効果に差が見られるかを調べた所、I3-waveは抑制をうけI1-waveは受けない事が判明した(文献3)。病気での変化を見た所、皮質性ミオクローヌス、舞踏病以外の基底核疾患、補足運動野病変では抑制がなくなり、感覚野や小脳病変では正常であった(文献1)。Sternocleidomastoid muscle(SCM)を被検筋として同様の分析を行った所、SCMを支配する運動野にも手指筋領野と同様の抑制機構が存在するとともに、頸筋のジストニアである痙性斜頚ではこの抑制が見られないことが判明した(文献6)。
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