研究概要 |
悪性リンパ腫に末梢神経障害を合併した患者の血清IgGが認識する抗原の同定を行った.この患者IgGはヒト,ウシ,マウスの末梢神経の分子量35-kdの抗原と反応し,免疫組織化学染色では末梢神経のコンパクトミエリンに反応性を示した.ヒト坐骨神経cDNAライブラリーを作成し患者IgGを用いてスクリーニングを行った結果,独立した3つのクローンを同定し得たが,そのいずれもがミエリンPO cDNAの配列と一致していた.しかしそれらのクローンはいずれもstop codonより下流の3'-untranslational regionに相当していた.次に免疫生化学的に抗原を解析するため,ヒト,ウシの末梢神経からミエリン分画を調整し,このミエリン分画からSDS-ポリアクリルアミドゲルを用いて35-kdの目的とする蛋白を微量精製した.この35-kdの蛋白に対する患者IgGとモノクローナル抗PO抗体の反応性を比較したところ,35-kd蛋白は患者IgGのみならずモノクローナル抗PO抗体とも反応した.以上の結果から35-kd蛋白は末梢性ミエリンに特異的に存在するPO蛋白のisoformの可能性が示唆された.しかし,この35-kd蛋白に対する循環抗体を各種疾患でスクリーニングした結果,末梢神経障害を伴わない悪性リンパ腫の患者血清にも同自己抗体を検出したことから,この自己抗体の末梢神経障害に対する病因的意義は有意ではないと考えられた.
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