研究概要 |
本研究の目的はミトコンドリア(mt)DNAの変異で生じるmt病の神経・筋細胞変性機序を明らかにすることである.そのため,CPEO,MELASに続き,今回MERRFのmtDNA変異と筋病理特徴との関連をsingle fiber PCR法、in situ hybridization法を用いて明らかにした。つぎにcytochromec(Cyt-C)によるアポトーシス誘導の関与を明らかにするために,以下の研究を行った.平成9年度,ヒト末梢血単核球(PBMC)およびマウス培養筋細胞に種々の濃度のCyt-Cを添加し,経時的にアポトーシスの有無を観察したが,Cyt-C添加後72時間内での形態的変化やDNA断片化は認めなかった。これはアポトーシス過程の誘導→決定→実行という最終段階の現象であり,決定に至る過程でのアポトーシス関連蛋白の変化を検討する必要があった。そこで,平成10年度はアポトーシス関連蛋白の発現を検討するため,各種抗体を用いたimmunoblot(IB),immunohistochemistry(IHC)およびRT-PCRにより,蛋白およびmRNAレベルで半定量的評価が可能なシステムを確立することであった。 (1) 数種のアポトーシス関連蛋白の抗体を数社より購入し,IBやIHCを用いて抗体の良否を検討し,IBでBcl-2,ICH-1_L,TIAR,Badはうまく働いた。同様の抗体を用いてIHCを施行し,染色された組織の特異性について検討中である。 (2) 特にBcl-2,Baxに対するprimer pairを作成し,RT-PCRの基礎実験を行い,陽性コントロール細胞では各々mRNAを検出できた。PBMCではBcl-2,BaxmRNAを検出できなかった。発現量あるいは感度の問題か,更なる検討を必要とした。 また,mt脳筋症患者生検筋でのCyt-C増加の有無を明らかにするため,抗ヒトCyt-C抗体を用いてIHCを行い,preriminalyな結果では明かな陽性筋線維を認めなかった。今後,抗体の良否,感度の検討を行い,再検討予定である。
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