研究概要 |
本年度は筋痙彎,ミオキミアを主徴とする21症例で,患者血清中の免疫グロブリンを用い,PC12,NB1などの培養細胞のK電流を抑制の有無,Western blot,二抗体免疫沈降法での抗VGKC抗体の有無を測定し,臨床症状との関連を検討した。その結果, (1)Isaacs症候群と診断された7例中3例でWB陽性であったが,全例でK電流の抑制が認められた.(2)Isaacs症候群以外の14例中6例(43%)でWB陽性であり,全例でK電流の抑制が認められた.(3)臨床症状,筋電図所見との関連では,筋電図上のmyokymiaがK電流の抑制の頻度が高い傾向が認められた.(4)MGで筋痙彎,またはmyokymiaを有する患者(3例)は全例でWB陽性で,かつK電流の抑制も認められた.(5)二抗体免疫沈降法では,検討した14例中4例(29%)でのみ陽性であった.(6)これらの血清ではNa電流の抑制は認められなかった.以上の結果から,抗VGKC抗体はIsaacs症候群にのみ特異的ではなく,特発性の筋痙彎,ミオキミアを主徴とする末梢神経障害に高率見られた.また抗VGKCの抗体のアッセイ系としてはpatch clamp法が最も鋭敏であり,WBがその次に有用であった.一方,Lambert-Eaton症候群,MGなどで用いられている二抗体免疫沈降法は感度の点で問題が多いことが明らかとなった. また抗ガングリオシド抗体が陽性のGBS4例の血清でNaチャネルの抑制の有無を検討したが,抑制は認められなかった.この事から,CBSにおける伝導ブロックには抗ガングリオシド抗体によるNaチャネルの抑制は関与しないと考えられた. 昨年度の研究と併せて,本研究により筋痙彎,ミオキミアなどの末梢神経の興奮性を主徴とする末梢神経障害においては抗VGKC抗体が高率に陽性であり,その病態と密接に関連することが明らかとなった.今後より簡便かつ鋭敏な抗VGKC抗体のアッセイ系の確立が必要である.
|