研究概要 |
パーキンソン病(PD)は黒質の神経細胞が変性,脱落する疾患であるが,その細胞死の機序としてアポトーシスが想定されているが,それと対立する報告もあり議論が分かれている.私共は剖検脳を用いてIn Situ end labeling法によりPD,および同様に黒質の神経細胞の変性,脱落を来す進行性核上性麻痺(PSP)の黒質でポトーシス様変化を観察した.アポトーシス様変化はコントロールでも観察され,年齢や,解剖までの死後時間とアポトーシス様変化との間には相関はみられなかった.またコントロール,PD,PSP間でアポトーシス様変化の割合に差はみられなかった.アポトーシスを早期より検出するとされるssDNAによる免疫組織化学ではコントロール,PD群ではそれぞれ6.7%,14.2%の陽性神経細胞がみられ両者間での差はみられなかった.以上の結果から,剖検脳では死亡直前の全身状態がアポトーシスを引きおこしている可能性があり,原疾患によるアポトーシスをみるのは困難と考えられた. 次にアポトーシスを制御する蛋白Bcl-2ファミリーの神経細胞での発現を検討した.アポトーシスを抑制する蛋白であるBaxと,Bcl-xL,Bcl-2の黒質での発現はBax,Bcl-2はPDとコントロールでは差がなかったが,Bcl-xLはPDでは発現する神経細胞が少なく,特に神経細胞が早期から脱落するとされる外側部と中間部で有意に少なかった.この結果はPDの黒質がアポトーシスに対して脆弱性をもつことを示唆している.
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