研究概要 |
老化現象と動脈硬化を示すマウス(klothoマウス)が確立され,klotho遺伝子の異常によることを明らかにした.高血圧や動脈硬化では,スーパーオキサイドアニオン(O_2)の産生が亢進し内皮由来一酸化窒素(NO)の作用を阻害することが知られている. 6-10週齢のklothoマウスへテロ型と野生型の胸部大動脈輪状標本のアセチルコリン(ACh)に対する拡張反応を,NO合成阻害薬N^G-nitro-L-arginine methyl ester(LNAME)10^<-4>Mの存在下と非存在下で測定した.LNAME非存在下では,ヘテロ型のAChによる弛緩反応は野性型よりも有意に低かった.LNAMEでAChによる拡張反応は両個体とも消失した. 6-10週齢のへテロ型と野生型について,24時間採尿後,飲料水として精製水またはLNAME500mg/Lを与える2群に分けた.尿中NO代謝物はへテロ型で野生型の約60%だった.LNAME投与で,尿中NO代謝物は野生型でより減少し,両個体間の差は消失した. 遺伝子組換えヒトSODにレシチン基を結合させ(レシチン化SOD),SODの組織移行性を高めたレシチン化SOD(0.25〜4.0Unit/ml)によるklothoマウス大動脈の弛緩反応をLNAME10^<-4>Mの存在下と非存在下で観察した.LNAME非存在下ではへテロ型のレシチン化SODに対する拡張反応は有意に低かった.LNAMEでレシチン化SODに対する拡張反応は両個体とも消失し,両個体間の差はなくなった. klothoマウスでは,血管内皮細胞のNOの作用が減弱している.klothoマウスのNOの低下はO_2の上昇によるNO消去の亢進よりも,NO産生自体の低下が寄与する.klotho遺伝子は,血管内皮細胞のNO産生を高めることにより血管保護作用を示す.
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