研究概要 |
1.5Tの磁気共鳴装置内で仰臥位の被験者の左前胸部に受信専用で形状可変型のgeneral purpose flex coilを装着し,stimulated echo acquisition mode(STEAM)法あるいはpoint-resolved spectroscopy(PRESS)法によるヒト心筋のプロトン(^1H)核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を行った.はじめに水信号抑制を行わずに積算回数16回で内部標準用の水信号を収集し,その後水信号抑制下に積算回数128回で信号を収集した.水信号の化学シフトを4.75ppmとし,これを基準にしてクレアチンの化学シフトを計算した.信号収集領域を2cm×2cm×2cm以上とすると十分なS-N比(signal-to-noise ratio)の信号が得られた.健常者の心室中隔からSTEAM法およびPRESS法で得られた^1H MRSスペクトルの中でのクレアチンの化学シフトは,それぞれ3.06±0.07ppm,3.18±0.07ppmであった.健常者について水の信号を内部標準として心筋内クレアチン含量を定量したところ,STEAM法では36.5±6.2μmol/g wet weight,PRESS法では27.6±10.0μmol/g wet weightであった.二つの方法による心筋内クレアチン含量の間に有意差はなかった.陳旧性心筋梗塞例の心室中隔から得られたSTEAM法による^1H MRSから心筋内クレアチン含量を計算すると25.7μmol/g wet weightであった.以上より,ヒト心筋の^1H MRSは実行可能で,STEAM法とPRESS法のいずれでも明らかな差はなく,心筋内クレアチン含量の定量が可能であるとの結論を得た.
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