研究概要 |
高血圧における血管反応性の亢進に神経終末から遊離するATPと血管機能との相互関連がどのように関与するかを明らかにすることを目的とする。対象:基礎検討には8週令の雄性Wistarラット、SHR/Izmおよび対照のWKY/Izmは8週令のものを用いた。ラット上腸間膜動脈灌流標本はCastellucciらの方法で作成した。電気刺激は動脈起始部に装着した白金電極により、非昇圧刺激の0.5Hz、5msec巾、上閾値電圧で刺激した。外因性ノルエピネフリン(NE)に対する反応は、0.25μgのNEを動脈起始部から注入し観察した。P_<2X>受容体agonistとしてはα,β-methylene-ATP(2.5x10^<-6>M)、P_2受容体拮抗薬としてはsuramin(10^<-6>M)を用いた。結果:基礎検討:0.5Hzの電気刺激は灌流圧に影響を与えなかった。同刺激によりNEによる昇圧反応は62.3%増加した。この反応は、10^<-5>Msuraminにより抑制された。SHR/Izmは平均血圧174.2mmHg、体重139g、および対照のWKY/Izmは平均血圧139.0mmHg、体重147gであった。SHR/Izm、WKY/Izmとも、非昇圧頻度の電気刺激では、NEによる昇圧反応に影響を与えなかった。α,β-methylene-ATP(2.5x10^<-6>)はNEによるNE昇圧反応の増強効果はSHR/Izmでは28.2%、WKY/Izmでは48.9%とSHR/Izmで低い傾向にあった(p=0.072)。 考察:電気刺激により交感神経終末からのATP放出によるNE昇圧反応の増強作用が観察された。この作用はsuraminで抑制されること、α,β-methylene-ATPの前投与によりNE昇圧反応の増強作用がみられ、suraminにより抑制されることからP_<2x>受容体を介していると考えられる。SHR/Izm,WKY/Izmではα,β-methylene-ATPによるNE反応性亢進作用がみられるが、電気刺激によるNE反応の増強作用がみられないことから、P_<2x>受容体を介する系は存在するが、ATPのco-releaseが減弱しているものと考えられる。
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