研究概要 |
予期せぬ突然死の半数を占めるとされる急性心筋梗塞症の発祥の危険因子やその発症機転は明らかではない。しかも、日本人心筋梗塞症での遺伝子系の頻度は欧米人と異なることが指摘され,日本人での研究成果が注目されている。本研究では、健常者および心筋梗塞症患者で、それぞれの遺伝子に特有の多形を認識するプライマーを用いるPCR法でapolipoprotein E(apo E)、アンジオテンシンIIタイプ1・レセプター(ATR1)、血管内皮型一酸化窒素合成酵素(ecNOS)、ホモシステイン関連methylenetetrahydrofolate reductase(MTHFR)の遺伝子多型を解析して日本人心筋梗塞症例における意義を検討した。結果。1)健常者において、apoE遺伝子でのε4 allele、ATR1遺伝子でのA1166C変異[AC+CC]型の頻度は欧米人に比べて低値であった。(Nakai K et al: Coronary Artery Dis, 1998)。2)apo E遺伝子でのε4 alleleは、健常者に比べ心筋梗塞症例で高頻度であった(Nakai K et al: Cornary Artery Dis, 1998)。3)ATR1遺伝子でのA1166C変異[AC+CC]は、健常者に比べ心筋梗塞症例で高頻度であった。(房崎哲也:岩手医誌、1999;Fusazaki T, Nakai K, et al: Eur Heart J, 1998)。4)ecNOS遺伝子intron4に存在する27塩基対の繰り返し配列の遺伝子多型4a/aは、健常者に比べ心筋梗塞症例で高頻度であった。(Ohsawa M et al: Circulation 1998)。5)MTHFR遺伝子多型VV型でのホモシステイン濃度は、他の遺伝子型に比べて高値であった。(VV型11.6±5.6μmol/L; AV型8.9±4.1μmol/L、AA型8.6±3.3μmol/L,)。またMTHFR遺伝子でのC677T変異によるalanine/valine(A/V)多型のVV型は、健常人に比べ心筋梗塞症例で高頻度であった。(Nakai K et al: Coronary Artery Dis, 1999)。 今後,このような複数の遺伝子型の組合わせによる遺伝子疾患感受性の検討が進み、それぞれの個人にあった心筋梗塞発症の二次予防あるいは一次予防指針として臨床応用されることが期待される。
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