研究概要 |
【目的】AngIIは平滑筋細胞などでは細胞分裂促進的に働くのに対し,ラット新生児培養心筋細胞に対しては分裂促進的ではなく,肥大促進的に働くとされている。近年細胞分裂能を強く保持したAT-1心筋細胞(ANP promoterにSV40のlarge Tを挿入して作成した形質転換細胞)が開発された。本研究の目的はAngIIがAT-1心筋細胞に対し分裂促進的に働くか,肥大促進的に働くかを明らかにすることである。【方法】AT-1細胞を初代培養3日目に48時間の無血清培養により細胞周期をGOにした。(1)AngII(10^<-9>-10^<-7>M)の単独刺激およびaFGF,PDGF存在下の刺激により[^3H]-Thymidine uptakeを計測した。(2)Ang刺激前,6,12,18,24,30,36,42時間後にcyclinA,B,C,D1,D2,D3,E,cdc2,cdk2のNorthernBlotおよびcdc2,cdk2のHiston H1 kinasc assayを行った。(3)Losartan, PD123319(1型,2型受容体拮抗薬)存在下に刺激を行い,BrdUのuptakeを抗ミオシン抗体との二重免疫蛍光染色にて観察した。【結果】(1)AngII刺激により容量依存的にThymidine uptakeは上昇した。aFGF,PDGF存在下では上昇はより顕著になった。(2)刺激後6時間よりcyclinC,Dl,D2,D3,cdk2の上昇を認め,18時間後よりcdc2,cyclin Aの上昇を認めた。刺激後6時間よりcdc2,cdk2によるHiston H1のリン酸化を認めた。(3)AngII刺激に伴ってAT-1心筋細胞のBrdUの取り込みを確認した。この反応はLosartanにより抑制された。【総括】AT-1心筋細胞においてはAng IIは1型受容体を介し細胞分裂促進的に働いた。このことはAng II刺激は心筋細胞の状態(細胞周期への入りやすさ)によって細胞肥大・分裂の双方に働くことを示すものと考えられた。
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