研究課題/領域番号 |
09670776
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 国立循環器病センター |
研究代表者 |
錦見 俊雄 国立循環器病センター研究所, 病因部, 室長 (80291946)
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研究分担者 |
寒川 賢治 国立循環器病センター研究所, 生化学部, 部長 (00112417)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1998年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1997年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | ドレノメデュリン / 高血圧 / 心不全 / 肺高血圧 / 心筋細胞 / 線維芽細胞 / 心筋梗塞 / アドレノメデュリン |
研究概要 |
申請者らはアドレノメデュリン(AM)の病態生理学的意義の解明を目的として、各種の循環器疾患の病態モデルやヒトにおける臨床研究により、以下の研究業績を挙げた。 ラット心不全モデルでは組織AM濃度、mRNAの発現は心臓、肺において心不全群でsham群に比し有意に増加しており、心不全時のAMの由来として心臓、肺の産生の亢進が示唆された。ヒト心不全においてもAMの分泌動態に関する検討を行うと、ペーシング前で冠静脈洞からのAMの分泌は大動脈より19%高く、心不全におけるAMの心臓からの分泌の亢進はヒトおいても確認された。また新生仔ラットの心筋細胞の培養系では心筋細胞、線維芽細胞ともにAMを培養上清中にほぼ同程度分泌しており、AMは両細胞においてcAMPを濃度依存性に上昇させた。さらに心臓におけるAMの産生調節を検討したところ、アンジオテンシンIIやエンドセリン、フェニレフリンなどは心筋細胞、線維芽細胞においてAMの産生、分泌を亢進させず、サイトカインであるIL-1βやTNF-αは心筋細胞、線維芽細胞でAMの遺伝子発現と培養液中への分泌を著明に亢進した。以上の結果から、心不全時には主にサイトカインがAMの産生増加に関係し、心筋細胞、線維芽細胞で産生されたAMはcAMPを介してオートクリン、パラクリン因子として働き、心不全の病態を修飾している可能性が示唆された。 AMの病態と血漿濃度との関係では、本態性高血圧患者において血漿AM濃度は左室肥大群や、頚部大動脈における伸展性が低下した群で高かった。急性心筋梗塞患者の血漿AM濃度は入院直後に既に増加しており、ピークは24-48時間にとった。ピークのAM濃度は心筋梗塞サイズの指標と相関した。血漿AM濃度は心臓血管手術後では麻酔直後では増加せず肺再灌流後に増加し、さらに手術時間と相関した。以上の結果から血漿AM濃度は本態性高血圧患者では臓器障害の指標、急性心筋梗塞患者では心筋梗塞の重症度を反映する指標、心臓血管手術後では手術の侵襲度を反映する可能性が示唆された。さらにAMの治療効果についても検討した。AMを肺高血圧ラットモデルに慢性投与すると、血漿濃度は約2倍であったが、この病態生理学的な範囲内で有意に右室の収縮期圧、右室重量、肺動脈の肥厚を抑制した。AMを心不全ラットに急性投与すると尿量、尿中Na排泄量の増加、血行動態の改善を認めた。以上の結果から肺高血圧時に増加したAMは肺高血圧を抑制する方向に働いているものと推察され、さらにAMが肺高血圧や心不全の治療薬となる可能性が示唆された。
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