研究概要 |
高肺血流型先天性心疾患の肺高血圧症の分子機構は不明である.23例の高肺血流型先天性心疾患(3ケ月-45歳)の肺組織における肥満細胞キマーゼの発現とその分布,さらにアンギオテンシンIIとの関連,肺高血圧との関連を検討した.対照は肺高血圧のない10例の肺組織を検討した.その結果,肺組織の肥満細胞の数そのものが心疾患群で有意に増加していることが判明した.また,肥満細胞の産生するキマーゼが心疾患患者群において有意に増加していることが明らかになった.また肺高血圧の指標である肺血管抵抗値とキマーゼ陽性肥満細胞数に正の相関が存在することを見い出した.即ち心疾患患者では肺組織肥満細胞数が増加し,しかもキマーゼ産生細胞であること,更に肺高血圧との関連が明らかになった.そこで,キマーゼ-アンギオランシン系の作動を検討するために,アンギオランシンIIの蛋白発現を調べた結果,キマーゼ産生部位に一致してアンギオランシンIIの発現を認めた.対照肺や肺高血圧の軽い場合では認めず,キマーゼ-アンギオランシン系の肺高血圧成立への関与が強く示唆された.今後,アンギオテンシンIIのレセプター拮抗薬の肺血管への効果を検討したい. 次に,肺胞マクロファージの役割について検討した.マクロファージの数は肺高血圧の高いものほど増加していた.マクロファージのケモカインであるMCP-1は肺血管抵抗の低い患者の肺胞マクロファージに,MIP-lalphaは肺血管抵抗の高い患者肺のマクロファージに発現しており,肺血管病変の進行度により異なったケモカインが作動していることが示唆された.
|