研究概要 |
1. 葉酸受容体(FR)遺伝子調節領域特異的結合因子の同定:(1)FR高発現細胞株であるKB細胞からの核抽出蛋白を用いて,ゲルシフト法によりFR種遺伝子Exonl上流-352/-461領域に特異的に結合する核内蛋白の存在を明らかにした.(2)さらにこの領域をオーバーラップを含む5つの断片(各36bp)に細分化したプローブを作成し,核蛋白の結合性を検索した結果,-426/-461領域への特異的結合が明かとなった.(3)短鎖(14-21mer)の合成オリゴヌクレオチドを用いた競合ゲルシフト法にて-439/-452領域への結合が示唆された.(4)この部位の塩基配列はCCAAT-enhancer binding protein β(CEBPB),GATA-2およびEts-1の結合部位コンセンサス配列を有し,これらの関与が示唆された.(5)結合部位塩基配列に変異を導入した合成オリゴヌクレオチドを用いて特異性を検定するとともに,抗体によるsupershift法にて,結合蛋白の同定を進めている. 2. FR遺伝子調節領域特異的結合因子の細胞株特異的発現:(1)前述した特異的結合蛋白がFR発現の程度に関係することを種々の細胞株を用いて検討した.(2)FR高発現細胞株として,KB細胞(親株),Hela細胞,およびメソトレキセート(MTX)耐性KB細胞株を薬剤除去media内で長期培養して得たC2revertant(C2-Rev,FR高発現)を用いた.FR低発現細胞株として,MTX耐性KB細胞株(C2-MTXR),乳癌細胞株(MCF-7),腎細胞株(MDCK),および腎癌細胞株(ACHN,SN12C,およびTK-10)を用いた.(3)FR高発現細胞株として用いたすべての細胞株で特異的結合が認められた.一方,FRの発現が高度に抑制された細胞株C2-MTX-Rでは特異的結合は著しく低下し,さらにFR低発現細胞株すべてにおいてもその結合は低下した.(4)薬剤耐性獲得にともなうFRの発現抑制細胞(C2-MTXR)およびFR低発現細胞株の両方にFR遺伝子発現調節領域への結合蛋白の結合の変化が認められたこと,さらにはC2-Revにおいて可逆的結合の再現が認められたことは,この領域でのFR発現調節が高次的または組織特異的発現調節に関与していることが示唆された.
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