研究概要 |
平成10年度"好中球組織障害に対する細胞内情報伝達制御による治療法の確立(代表研究者:安井耕三)"のテーマにおいて次のような研究を遂行し,結果を得た。 1) 好中球はTNF,LPSで傷害された内皮細胞との接触により接着分子(とくにMac-1)を介して,活性酸素産生・酵素放出の機能発現のスイッチ(チロシンリン酸化)が入る。 2) GM-CSFは接着分子を介して好中球遊走に対し2相性の影響を有するほか機能発現のプライミング作用があるが,とくに炎症担当細胞である好中球寿命を著明に延長する.G-CSFにも同様の作用があるが,GM-CSFに比し軽微であり,GM-CSFは強い炎症性サイトカインとしてとらえられる。(Jpn J Pediatr Hematol,Br J Haematol,Int J Hematol) 3) 気管支喘息薬であるテオフィリンが,好中球の寿命を短縮しこの作用がBcl蛋白に作用しGM-CSFやIL-5に拮抗し抗炎症作用を有するが,(J Clin Invest)この作用がアデノシンA2アンタゴニストとしての作用であることを証明した(未発表)。 4) 細胞内情報伝達を一部遮断する薬剤が,好中球機能亢進がその病因と考えられるベーチェット病に有効であること(Ann Intern Med)を報告し,小児の症例での有効性を検討した(J Pediatr). 5) 顆粒球寿命は組織障害に関係することが示唆され,ダウン症候群での顆粒球寿命の短縮と喘息罹患率の低下の関連性が判明した(Am J Med Genet)。
|