研究概要 |
45,X/46,X,r(X)ないし45,X/46,X,mar(X)のターナー症候群患者のうち軽度-中等度の発達遅延を伴うがその他の多発奇形を伴わない症例についてring(X)/mar(X)染色体の構造、X染色体不活化の有無、及び親由来を染色体高精度分染法、FISH法、RT-PCR法、PCRによる高度多型マーカーの解析、アンドロゲンレセプターアッセイなどを用いて検討した。その結果、これらのring(X)/mar(X)は従来の報告と異なりX染色体不活化中心(XIST)を保持している例もいない例もあり、またこれらの染色体からのXISTの転写がみられる例やみられない例があるにもかかわらずアンドロゲンレセプターアッセイ上はいずれもX染色体不活化を受けていないことが判明した。これらの結果は発達遅延の発症機序としてのX染色体不活化不全を裏付けるものであったが、その分子的背景は様々であることが明らかになった。臨床的に軽度の発達遅延を伴うのみのターナー症候群でもこのような機序による発達遅延をきたしている可能性を考える必要があることが明らかになった。これらの症例のうち一例は加齢に伴ってmar(X)が減少してきており、成人では一見45,Xにみえても同様の機序で発症し、低身長、発達遅延などを伴う"masked"mosaic Turnerが存在する可能性も考えられた。引き続いて、同様のアッセイを発達遅延を伴わない45,X/46,X,r(X)ないし45,X/46,X,mar(X)のターナー症候群患者についても施行したところ、発達遅延を伴わない症例ではring(X)/mar(X)のX染色体不活化不全は認められなかった。
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