研究概要 |
1. グラム陰性・陽性菌に共通の16SリボゾームDNA配列を含む部分のオリゴヌクレオチド(Eubacterla)およびブドウ球菌,グループB連鎖球菌),マイコプラズマ,エルシニア,結核菌および抗酸菌に特有のDNA配列を含む部分のオリゴヌクレオチドを合成し,無菌操作で取り出した血液DNAを用いた敗血症スクリーニングに使用できることを確認した. 2. Bartonella henselae血清学的診断法の開発を行った. 1) 間接蛍光抗体法を開発し,猫ひっかき病疑い患者119例中41例で血清学的確定診断が得られた。41例中14例は不明熱,肝.脾肉芽腫を示す全身型感染だった。 2) 受身赤血球凝集反応によるBartonella henselae 抗体検査法を新たに開発した. 3) 健常成人267名のB.henselae IgG抗体陽性率は6.4%(17/267)だった.このうち,猫との接触歴のない群の抗体陽性率は2.3%(4/173),接触歴のある群では12.5%(10/80),さらに猫ひっかき病患者の同居家族では21.4%(3/14)であり,猫との接触歴の有無により抗体保有率に有意な差が認められた(p<0.01). 3. Bartonella henselae特異的DNA検出のためのPCR法を開発し,以下の結果を得た. 2) 7日以上の不明熱を示す患者で猫または犬との接触歴がある14例について血清学的にBartonella hensela感染症と確定診断できた.また,このうち6例で敗血症の有無を検討したところ,2例で16SリポゾームDNAおよびBartonella henselae特異DNA配列が陽性だった. 4) 飼い猫のB.henselaeIgG抗体保有率は30%(6/20)だった.また,猫の血液16例中1例で陽性,口腔スワップでは10例中2例で陽性を示した.また,猫21匹のノミ・目ヤニのPCR法を用いてB.henselaeDNAの検出を試み,1例の猫ノミ・目ヤニでPCR陽性だった. 5) 飼い犬による感染で猫ひっかき病に罹患した2例を特定できた. 6) 飼い犬のB.henselaeIgG抗体保有率は7.6%(4/52)だった.また,血中および口腔スワップのPCR法では5.7%(3/52),55.5%(5/9)でB.henselaeDNAが検出された.以上の事実から,猫のみでなく,犬も重要なB.henselaeの保菌宿主であることをはじめて証明した.
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