研究概要 |
小児の炎症性疾患においてアラキドン酸代謝系合成酵素の活性化が認められている.その機序のひとつに酵素のmRNAレベルでのup-regulationの機構がある.これらは各種サイトカインや炎症性刺激物質により制御されている.炎症細胞のアラキドン酸代謝系酵素,cytosolic phospholipase A2(cPLA2),COX1,COX2,5-lipoxygenase(5-LO),LTC4 synthase, LTA4 hydrolaseおよび活性蛋白,5-LO activating protein(FLAP)の活性化の制御機構を,各酵素のmRNA発現をRT-PCR法およびNorthern Blotting法をもちいて検討した. ヒト多核白血球をIL-3およびGM/CSFで刺激すると,LTB4およびTXB2産生は0.5-1時間後に一過性に増加し,一旦低下したあと,数時間後にTXB2のみ再度産生が増加するという2相性の制御をうけていることが判明した.COX2のmRNA発現が2度目の上昇の相に一致して増加していることも明らかとなった.また,IL-8は1時間後にLTB4の産生のみを増加させ,TXB2産生には影響を与えないことより,5-LOもしくはLTA4hydrolaseに対するpriming作用があることが予想される.IL-8も数時間後にCOX2のmRNA発現を増加させる.また,Th2サイトカインに分類されるIL-4,IL-10,IL-13のうちIL-4,IL-13を作用させると,6-9時間をピークにLTB4の産生が増加した.PMNにTh2サイトカインによるmRNAレベルでの新しいup-regulationの機構が存在することが判明した. つぎに,ヒトの白血病細胞であるHL-60細胞をもちいて実験をおこなった.DMSOで細胞を好中球に分化させた時に,合成酵素である5-LO,LTC4synthase,LTA4hydrolaseが誘導されることにより,LTB4とLTC4の産生が亢進することを見いだした.更に,endotoxinであるLPSの存在下に好中球を培養すると,cPLA2とCOX2のmRNAと酵素蛋白が誘導され,アナフィラキシーのメディエーターであるTXA2の産生が亢進することが判明した.また抗炎症,抗アレルギー性薬剤がこれらの酵素系にどのように作用しているかについても一連の研究をおこない結果を報告した.
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