研究概要 |
乳児重症ミオクロニーてんかん(SME)は,1978年Dravetらが最初に報告した特異なてんかん症候群である.てんかんや熱性痙攣の家族歴が高率であることが指摘されているが,家族のてんかん分類や発作型は不明のことが多く,遺伝解析はなされていない.SME患者4家系5例とそれぞれの両親,同胞のHLA抗原,家族内痙攣性疾患の臨床像を分析した. 3家系で母方に痙攣やてんかんの遺伝性素因を認めた.患児と母のHLA抗原はA24(9)が全例に認められたが,HLA抗原頻度では日本人対照と比較し,その出現率に有意差はなく(P<0.05),SMEとHLA抗原との関連性は乏しいと思われた.ただ,母系遺伝や,母を介しての表現型の促進現象の可能性に関しては今後,症例追加による検討が必要である. 次に,基礎的成因の検討のため,患者脳の脂質分析をした.以前,West症候群の脳ガングリオシド分析にてその未熟性を指摘しているが,未熟性脳神経成熟障害の本質を検討するため,神経上皮細胞由来腫瘍と母乳のガングリオシド分析を行った. 原始神経外胚葉性腫瘍(PNET),細胞性上皮腫(EP),神経芽細胞腫(HB),の分析では,シアル酸量は発生分化とともに増加し,一番未熟で悪性なPNETが最低量を示した.PNET,EPではG_<M3>,G_<D3>の単純ガングリオシドが主成分を成し,NBではG_<M2>,G_<M1>,G_<T1b>,G_<Q1b>が検出され,シアル酸の多い複雑ガングリオシドの生合成がなされ,より分化している事を示唆した. 母乳のガングリオシド分析では,G_<D3>が母乳の主要成分をなし,G_<M3>が分娩後8日目より急速に増加し,G_<M3>/G_<D3>は徐々に増加傾向を示した.調整粉乳と牛乳には母乳の1/2程度のガングリオシドしか含有されていなかった.母乳ガングリオシドの生理的意義を検討し,また,PNETのガングリオシド組成に類似しており,母乳の脳神経細胞の成長分化への関与の可能性についても検討している.
|