研究概要 |
臍帯血幹細胞のTPO依存性巨核球血小板造血に及ぼすITP自己抗体のin vitroでの影響を検討した.満期分娩時,同意を得て採取したヘパリン加臍帯血より単核細胞を分離し,TPO存在,非存在下の液体培養系での細胞増殖を,計数及び形態的検討及び血小板特異抗原量によって評価し,TPO依存性巨核球血小板造血に対する患者血漿画分の影響を検討した.またITPにおける血清TPO濃度,特異自己抗体をELISAにて測定して関連を検討した. 健常人血漿添加系:GM-CSF,EPO単独添加では巨核球血小板造血を示す形態的,免疫学的徴候は見られず,一方TPO単独添加ではmonotonousな巨核球増殖を認め,殆どがGPllb/llla陽性細胞であった.細胞可溶化GPllb/llla量も著増し,血小板造血が確認された. 慢性ITP血漿添加系:TPO添加系での2週後の培養細胞数は少なく,macrophageが優位で,GPllb/llla量も少なかった.ITP血漿がTPO依存性巨核球血小板造血に対して抑制的に作用することが示唆された.これが巨核球抗原発現細胞に対する自己抗体の直接作用によるものか,TPO-receptor相互関係を介した造血障害かを検討するため,affinity単離した血漿lgG画分のTPO依存性造血への影響を検討したところ,ITP患者由来のlgG画分に,TPO依存性巨核球血小板造血に対する抑制作用があることが示された.しかし血小板抗GPllb/llla自己抗体量とTPO依存性血小板造血抑制との間に明らかな相関は見られていない.ITP患者血清中のTPO依存性巨核球血小板造血抑制作用は,本症で通常見られる抗GPllb/llla活性以外のlgG画分によることも示唆され,ligand-receptor相互関係に対する抗体活性の有無の検索も必要と考えている.
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