研究概要 |
(1)臍帯血採取法 児娩出後、胎盤娩出前に臍帯静脈を直接穿刺採血したシリンジ法では、採血量は78.5±35.8ml、有核細胞数9.0±5.1×10^8、単核球数3.8±2.4×10^8であった。また、胎盤娩出後に臍帯動静脈にカテーテルを挿入し動脈側より抗凝固剤含有の生理食塩水を還流しながら静脈側より臍帯血を、採取した還流法では、有核細胞数3.6±3.5×10^8、単核球数1.2±1.3×10^8であった。いずれの方法も採血量、採取細胞数ともに個体差が大きかった。シリンジ法と還流法では採取細胞数に統計学的有意差を認めなかった。また、シリンジ法で採取した胎盤を還流しても殆ど細胞は回収できず、還流法は方法も煩雑で、臍帯血バンク導入に当っての臍帯血採取法として還流法は適していない。また、事実上臍帯動脈へのカテーテルの挿入が不可能な症例もあった。 (2)臍帯血幹細胞の分離法 臍帯血バンクの導入を考えれば、赤血球除去が必要で、多くの臍帯血を保存する必要もあり、省スペースのために幹細胞の分離法を検討する必要がある。比重遠心法と沈降法の差を比較検討した。有核細胞回収率、単核球回収率、CFU-GM回収率はそれぞれ比重法で29.9±10.0%,52.8±16.3%,42.2±30.4%,沈降法で66.9±26.6%,63.2±19.9%,76.1±53.1%であった。有核細胞回収率で両者間に有意差を認めた(p<0.01)が、単核球回収率およびCFU-GM回収率は有意差を認めなかった。比重法では多核球の混入が少なく凍結保存の省スペースにつながる方法がやや煩雑である。沈降法は勘弁ではあり多核球の混入が多いものの、臍帯血レベルでは凍結保存の際の量に問題はなかった。
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