研究概要 |
結核などの炎症性皮膚疾患においては特徴的な多核巨細胞の浸潤が認められるが,合胞体細胞の形成機序,機能,疾患における役割は不明である。申請者のItoらが発見した,多核細胞を誘導する機能を持つユニークなモノクロナル抗体である抗fusion related protein-1(FRP-1)抗体を用いて,多核巨細胞(MGC)を形成する各種慢性炎症性皮膚疾患におけるFRP-1の発現を免疫組織学的に臨床経過とともに解析した。対象は皮膚サルコイドーシス7例,環状肉芽腫4例を用いた。両疾患の病理学的所見は共通で,病初期病変部では多核巨細胞は見られず,血管周囲に単核球浸潤が見られるが,このとき既に疎に集塊を形成する細胞において細胞膜上にFRP-1の発現がみられた。密に増生した細胞集団では膜上のFRP-1発現は極めて高かった。少数の核を持つ巨細胞では,FRP-1は周辺の細胞膜にのみ発現が見られ,成熟したMGCでは細胞膜周辺のFRP-1は著明に減弱していた。ついで,この仮説を実験的に確認するため,ヒト末梢血単球を機能的抗FRP-1抗体処理培養し,FRP-1発現を異なる抗FRP-1抗体を用いて免疫染色し,経時的に観察した。MGC形成過程において個々の細胞のFRP-1の反応が増強し全ての細胞にFRP-1発現が認められるようになり,その発現量も上昇した。その後細胞は集合し,細胞塊を形成した時点で,FRP-1発現量は最高値を示した。細胞が融合し,融合とともに細胞集塊中央よりFRP-1発現が消失した。これは免疫組織染色の結果を裏付け,確認する結果であった。以上の結果より,FRP-1は皮膚肉芽腫におけるMGCの形成を誘導する共にそのdownregulationによりMGCの巨大化を防ぎ、過剰な細胞融合を制御する分子であることを明らかにしえた。
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