研究概要 |
表皮ケラチノサイトの分化と増殖は密接な関係があると考えられる。しかし表皮ケラチノサイトの増殖の制御に重要な働きをするEGFファミリーに属するTGF-alpha,amphiregulin(AR),heparin-binding EGF-like growth factor(HB-EGF)などの内因性(オートクリン)増殖因子と細胞分化との関連はまだ明らかにされていない。我々は正常表皮においてTGF-alphaとHB-EGFの局在を免疫組織学的に検討した。TGF-alphaは基底細胞より上層の有棘細胞層に、HB-EGFは表皮全層に発現するが上層の方がより強く発現し膜結合型として存在する。即ち両者とも基底細胞ではなく分化した表皮細胞に強く発現していることを明らかにした。 TGF-alpha,HB-EGFの表皮ケラチノサイトの細胞分化との関係を培養表皮細胞を用いて細胞の分化誘導に伴いTGF-alpha,HB-EGFの発現は変化するのかを蛍光抗体法にて検討した。即ち低Ca(0.1mM/l)無血清条件下で表皮細胞を培養しsubconfluentに増殖した後に高Ca(1.8mM/l)条件下で24時間培養すると分化が誘導される。ケラチン1、ケラチン10の発現を抗ケラチン1、ケラチン10抗体を用いて蛍光抗体法で染色し蛍光顕微鏡で観察し細胞分化を確認した。次に低Ca条件下と高Ca条件下で分化誘導前後TGF-alpha,HB-EGFの発現を蛍光抗体法にて観察し、これらの発現が増強しているか、局在に変化があるかを検討した。尋常性乾癬は表皮の増殖亢進を一つの特徴とする炎症性角化症の一つである。尋常性乾癬の皮膚組織を免疫組織学的に検討したところ病変部では正常部に比べてHB-EGF,TGF-alphaいずれも発現の増強が認められるがHB-EGFはTGF-alphaより上層の有棘細胞層に強く発現していた。
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