研究概要 |
(1) メラノーマ組織におけるHLA class I抗原の発現 メラノーマ凍結組織を用いてHLA monomorphic,A及びB locus,allele特異的抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)を用いて免疫組織学的に検討した。その結果、HLA ClassI抗原の発現が低下していることが明らかとなった。HLA Class I発現異常はmonomorphic,locus,allele特異的抗体の順で検出頻度が高くなった。発現異常の程度は1個のallele抗原から検討したすべてのallele抗原の欠損に至るまで多様であった。HLAClassI発現低下はmonomorphicな抗体では検出できないことがあり、allele特異的抗体を用いることで従来の報告よりも高頻度にHLA ClassI発現異常があると考えられる。さらにこれらの発現低下は原発巣の浸潤度や予後と相関しており、病変部のCD8陽性T細胞浸潤と逆相関していた。以上のデータはT細胞を主体とした免疫療法を行なう場合の患者選択の重要な情報となり、そのメカニズムの解明や対策が免疫療法の有効性を高める上で急務である。 (2) メラノーマ組織におけるLMPやTAP分子群の発現とサイトカインによる発現調整 癌関連ペプチドの発現提示の機構において重要な役割を果たす分子群であるLMP2,7,TAP1,2に対する抗血清を用いてメラノーマ組織における発現を免疫組織学的に検討した。LMP2,7,TAP1,2の発現はそれぞれ相関し、約60%の症例ではHLA class Iとも相関した。すなわち、HLA class I発現低下の機構にLMPやTAP分子群が深く関与していることが示唆された。さらにこれらの発現低下はメラノーマの病勢や予後と有意に相関した。また、培養メラノーマ細胞ではIFN-ganmaやTNF-alphaの作用でLMPやTAP分子群の発現が増強することが明らかになった。
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