研究概要 |
近年,電磁場や電磁波は生体に対して何らかの悪影響を及ぼしているのではないかとする論文が報告されている.一方,画像診断領域ではMRIが普及しているがヽその安全性に関しては十分に確立されていない.そこで,MRI近似条件をパルスフーリエ変換NMR装置で作り出し,MRI環境近似条件下(6.3T高定常磁場、水素のラーモア周波数で90度パルスと180度パルスが繰り返し生じるパルスラジオ波環境)で細菌に変異を生じさせるかの検討を行った。研究は1)高定常磁場のみで細菌変異を誘発できるか,2)高定常磁場にMRI装置近似のパルスラジオ波を加えることにより細菌変異を誘導できるかの検討が骨子であるが,高定常磁場単独あるいはパルスラジオ波暴露を加えた際にmutagenとして使用した化学物質の作用に影響を及す結果が得られ,併せて3)その事象についても検討を行った. 1)および2)に関しては、AMES法およびSOS反応検出で用いられる,遺伝子変異があらかじめ決定されているSalmonella typhimurium変異株を使用した.高定常磁場単独、高定常磁場にパルスラジオ波を加えた環境下の1時間までの暴露では、対照群に対して有意にpoint mutation, frameshift mutationは認られなかった。また,SOS反応も30分までの暴露では有意に生じなかった.高定常磁場単独およびパルスラジオ波混合環境の細菌に対する催変異作用は指摘できないと考えられた.3)に関してはSOS反応発現の有無を利用し,4種類のmutagan(Cisplatin, Furylfuranmide, MitomicinC, 4-Nitroquinoline N oxide)を対象として実験を行った.30分までの高定常磁場およびパルスラジオ波混在環境下では,Cisplatin, Furylfuramide,MitomicinCでSOS反応発現程度は対照群に比べて軽度ながらも減少する結果となった.高定常磁場およびパルスラジオ波混合環境は一部の変異原物質の作用を減弱する可能性が示唆された.
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