研究概要 |
定位手術的照射(SRS)で治療された脳動静脈奇形症例のうちMRスペクトロスコピー(MRS)にて経過観察が可能であった4症例(男3,女1,年齢21-65歳,平均46歳)を対象とした.SRSは10MV X線で最大線量18.8-28.8Gy,辺縁線量15.0-20Gyを照射した.MRSはnidusに接した深部白質と健側の深部白質に2.2-4.0ccmの関心領域を設定し,MRS上計測される代謝産物を半定量的にCrに対する比として算出した.治療前のMRSではspectrumに左右差は見られなかった.SRS6ヶ月後にT2高信号が出現した例にはT2高信号出現4ヶ月後(SRS10ヶ月後)にNAA/Crの減少とlactateの出現を認めた.しかしCho/CrおよびMyo/Crの有意な変化は認めなかった.また他の1例ではT2高信号が10ヶ月後に出現し,NAA/Crの減少とlactateの出現を伴っていた.またT2高信号が出現していない1例でもNAA/Crの低下を認めた.なお4例とも健側には有意な変化は認めていない.nidus周囲の深部白質で認められたNAAの低下はneuronal viabilityとneuronal functionの低下及びneuronal lossを示唆している.またT2高信号域が出現したいずれの部位でも検出されたlactateは嫌気性解糖を示唆している.これらの機序に関しては多数例での今後の検討が望まれる.
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