研究概要 |
1. BAG-1の過剰発現によりヒト胃癌細胞の運動能及び腹膜播種能が亢進する。 低線量の放射線により癌転移を抑制することを最終目的として,ヒト胃癌細胞のヌードマウスにおける転移システムを確立した。ヒト胃癌細胞MKN74細胞にアポトーシスの抑制分子であるBcl-2結合蛋白BAG-1 cDNA遺伝子を導入し,stableトランスフェクタントを作製した。これらの細胞株は,増殖能には変化はなく,皮下内接種による腫瘍形成能もコントロールと同一レベルであった。しかし,腹腔内における浸潤能は,コントロール群に比し3-4倍も高まっていることが判明した。さらに,これらの細胞は,金コロイド法やトランスウエル法を用いた運動能の評価により,優位に運動能が亢進していることを明らかにした。したがって,BAG-1は,消化器癌の浸潤に重要な因子となりうることが推測された。 2. 放射線照射後のアポトーシス感受性は、JNKの活性化レベルと相関している。 様々なヒト癌細胞における放射線誘導アポトーシスの感受性を調べた結果,放射線照射後のJNKの活性化レベルと高い相関性を示すことが明らかになった。 3. 照射による腫瘍関連抗原およびICAM-1の発現の増強 種々のヒト腺癌培養細胞に低線量の放躬線を照射し、c-erb B-2およびICAM-1の発現の増強を認めた。放射線は免疫能を低下させると言われているが、低線量の放射線は免疫能を高めることが証明され、使用法によっては転移を抑制することが示唆された。
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