研究概要 |
肝癌に対する血管塞栓術に際し,その効果増強と治療効果判定の容易化を目的として異なる粘稠度とX線吸収値を有する4種類の油性塞栓物質を作製し、その有用性について動物実験を行った。作製した油製剤は非ヨード化けし油と増粘剤(triolein)を含有し,lipiodolと比べて低粘稠度(p-l),等粘稠度(p-e),高粘稠度(p-h),非ヨード化けし油に増粘剤を加え高粘稠としたもの(Lp-h),およびlipiodolの5種類で、lipiodolと合わせて5種類の油性製剤の肝腫瘍、(VX2),肝実質への停滞量をCTを用いた画像上の検討および病理組織学的に停滞量の計測を行った。 【結果】1.CT像の検討:注入直後のCTスキャン像では,腫瘍部への油性製剤の停滞は良好で,腫瘍は低吸収域として描出され,造影剤注入により腫瘍辺縁部が造影されるのが観察された.経時的観察では,腫瘍部の油製剤の停滞量は,Lp-hおよびp-hが長期間みとめられ,lipiodolやp-eよりも多量に停滞した.p-lの停滞量は他の製剤よりも少なく,早期に消失した.以上より,腫瘍部への油性製剤の停滞がCTスキャンで低吸収域として観察でき,かつ造影剤注入により腫瘍部の血流遮断程度を評価できることが分かった 2.病理組織像の検討:肝実質(非腫瘍部)ではlipiodolはグリソン鞘内結合組織,門脈壁,およびその周囲の類洞に停滞し,p-eも同様であった.Lp-hおよびp-hはlipiodolやp-eよりも多量にグリソン鞘内および周囲類洞に停滞した.p-lの分布はグリソン鞘内よりも中心静脈周囲の類洞に停滞し,その停滞量は他の製剤よりも少なかった.腫瘍部ではlipiodolおよびp-eは腫瘍辺縁部に有意に集積し,主に腫瘍血管,血洞内に停滞していた.これに比し,Lp-h,p-hは,分布は同じだが停滞量は有意に多く,一方p-lは有意に少なかった. 【考察】われわれの作製した油性製剤はその粘稠度に応じて腫瘍部および肝実質への停滞量は変化することが分かり、その分布はCT画像上で確認できるのと同時に壊死化しない腫瘍部の同定が可能であった。以上の結果から本油製剤の臨床的応用が可能で、有力な治療剤になりうると考えられた。
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