研究概要 |
目的 日本においては,現在においても諸外国に比べ,精神病床数(人口比)が多く,平均在院日数も長く,長期入院者の退院の促進が重要な課題となっている。長期入院者の退院を促進する上で,どのような社会資源が最も必要とされるのかを,社会生活能力の障害の程度から推定することを目的とした。 方法 16病院,1124人の入院者(入院期間1年以上)を対象に社会生活能力の障害と退院可能性(病状の改善により,近い将来(1年以内)退院可能になる(退院可能群1),住居,活動,支援の場が整えば,近い将来退院可能になる(退院可能群2),病状等の理由により,入院継続が必要(入院継続群))について調査した。社会生活能力の障害は,精神科リハビリテーション行道評価尺度REHABによって評価し,退院可能性は主治医の判断によった。また,デイケア(413人),生活訓練施設(106人),入所授産施設・福祉ホーム・グループホーム(以下,居住施設,51人)の利用者,570人についても,評定を行い,入院者との比較を行った。 結果 入院者の退院可能性については,退院可能群1;115人(10.2%),退院可能群2;453人(40.3%),入院継続群;556人(49.5%)であった。 逸脱行動全得点では,退院可能群2では,デイケア,居住施設,退院可能群1,入院継続群との比較では,有意差(p<0.01)を認め,退院可能群2と生活訓練施設との比較では,有意差(p<0.05)を認めた。全般的行動全得点では,退院可能群2は,デイケア,居住施設,退院可能群1,入院継続群と比較では有意差(p<0.01)を認めたが,退院可能群2と生活訓練施設との比較では有意差を認めなかった。 考察 退院可能群2が40.3%を占め,今なお,社会資源の不足のため退院が促進されていないことが明らかとなった。退院可能群2の社会生活能力が推定すると,退院可能群2の入院者は,デイケアや居住施設の利用者よりも密度の濃い生活支援を必要とし,生活訓練施設の利用者とほぼ同等の生活支援があれば,退院が促進されるものと考えられた。結論 長期入院者の退院の促進のためには,生活訓練施設の増設や利用の拡充を図るとともに,地域生活支援センターやホームヘルプなどを整備し,生活訓練施設と同程度のサービスが利用可能な地域生活支援体制の確立が必要である。
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