研究概要 |
てんかん発作発現機序には,抑制性および興奮性神経伝達物質の不均衡状態が重要とされる.脳内ノルアドレナリン系は,キンドリング形成対して抑制的に作用すると報告されている.ところで,ノルアドレナリン系は幼若期では成熟期に比べて未熟であると言われる.幼若期のてんかん原性形成におけるα2受容体の役割について,生後14日齢,21日齢,28日齢の幼若ラットならびに70日齢の成熟ラットを用い,扁桃核キンドリング形成過程における影響を検討した. 1. α2受容体アゴニストであるクロニジンは,キンドリング形成に対して,成熟ラットおよび28日齢ラットでは抑制的に,14日齢ラットでは促進的に作用した. 2. α2アゴニストのクロニジンの14日齢の幼若ラットキンドリング形成促進作用は,α2アンタゴニストであるヨヒンビン,イダゾキサン,ローオルシンを併用して投与した際には減弱・消失した. 3. ノルアドレナリン前駆物質のドロキシドパは,28日齢ラットキンドリング形成に促進的に作用する傾向がみられたが,14日齢,21日齢のラットでは有意な影響を認めなかった. 4. ヒスタミン前駆物質のL-ヒスチジンは,キンドリング形成に対して,成熟ラット,および14日齢,21日齢の幼若ラットでは抑制的に作用したが,28日齢のラットでは有意な影響を示さなかった. 以上の幼若期から成熟期にかけてのラット扁桃核キンドリング形成に対する薬理学的研究から,α2受容体のてんかん原性形成過程に及ぼす影響は,成長発達により異なり,促進的に,成熟期では抑制的に作用する,年齢特異性の効果を示すことが明らかとなった.
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