今回の検討により血糖コントロール不良の糖尿病患者や糖尿病ラットにおいては、好中球からの活性酸素(O_2^-とOCl^-共に)生成能の低下を認めることが再確認された。更にO_2^-とOCl^-の低下の検討から、O_2^-生成酵素(NADPH oxidase)活性の低下に加えてOCl^-生成酵素(MPO)活性の低下も生じている可能性が示唆された。グアイアコール法を用いて糖尿病患者のMPO活性を測定すると、糖尿病患者において明らかにMPO活性が低下しており、この低下はHbA1cが高値を示した患者ほど低下していた。好中球活性酸素生成能の低下は、易感染性を生じることが知られており、糖尿病患者における易感染性の機序の一つとして、好中球活性酸素生成能(NADPH oxidase及びMPO活性)の低下が関与していることが明らかとなった。 今回の研究にて更に興味深い結果は、糖尿病患者において現在臨床的に使用されている幾つかの薬剤が、低下している好中球の活性酸素生成能を改善した点である。Granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)やアルドース還元酵素阻害剤(Epalrestat)も糖尿病患者および糖尿病ラットにおける低下した好中球活性酸素生成能の改善に有効であることが明かとなった。 以上の結果は、糖尿病患者における易感染性や感染症の重症化に対する新しいマネージメント(治療法)として、低下している感染防御機構(特に好中球の酸素依存性殺菌能)の改善も今後有効である可能性が示唆された。
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