研究概要 |
1.2型糖尿病患者血小板のPKC isoformの活性をウエスタンブロット法で測定し、健常者の免疫活性と比較検討した。糖尿病合併症、特に網膜症を有する患者血小板のPKCβ免疫活性は有意に高く、また、糖尿病性腎症を有する患者は逆に低下したが、糖尿病で顕性腎症のない患者血小板PKCβ免疫活性は明らかに、健常人に比して高かった。一方、PI 3-kinase,MAP kinaseの免疫活性を2型糖尿病患者血小板で検討した。MAP kinase燐酸化抗体による血小板の免疫活性は網膜症を有する患者で高い傾向がみられた。更に症例を増加させて、検討する必要がある。 2.血小板からのセロトニン放出反応に関しては、糖尿病に高血圧を合併する例、合併しない例、非糖尿病で高血圧を有する例、健常人で比較検討した。糖尿病で高血圧を合併する例のみが、明らかにトロンビン刺激による[14C]5-hydroxytryptophanの放出が亢進しており、血小板からのセロトニンの放出が糖尿病に合併する高血圧の発症に関与する可能性が考えられた。 3.肥満に関与する食行動調節ホルモン、レプチンはin vitroで血小板凝集を亢進させることを我々確認し、その上で、各種血小板受容体アゴニストであるコラーゲン、ADP,トロンビン刺激による凝集能と血中レプチンとの関連を検討した。ADP刺激による血小板凝集能は高レプチン群で高値を示した。以上より、糖尿病合併症の進展には血小板凝集能亢進が明らかに関与し、さらにこれに肥満が加わり、血中レプチン高値が相乗的に作用すると、セロトニン放出の亢進による高血圧が更に、加味され、microangiopathy,macroangiopathyへの進展が更に促進される。
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