研究概要 |
1. 今回、新たに3家系のTBG増多症(Ex)を解析した。Ja(日本人)5は家族性(Fa)で、母と男児にDuplex PCR-HPLC(P-H)法によりTBG遺伝子の2倍増幅を認めた。Ja6は散在性(Sp)で男児のみにP-H法によりTBG遺伝子の2倍増幅を認めた。この2家系は染色体のFISH(FI)法で増幅を確認できなかった。もう1家系はSpで、遺伝子増幅は存在しなかった。現在遺伝子異常を検索中である。 2. Fa-Exの8家系(Ja1,2,3,5と白人4家系)と、Spの2家系(Ja4,6)において、P-H法によりExを示した患者全てに、血中TBG値に対応したTBG遺伝子の増幅を認めた。3倍増幅を5家系に、2倍増幅をSpを含め5家系に認めた。解析した10/11家系に遺伝子増幅を認めたことから、これがFa-Exの主要な機序であると考えられた。またSpの2家系は共に2倍増幅であったことから、染色体の交叉不均衡により遺伝子増幅が2倍から3倍に増加していくものと思われた。 3. FIを7家系で行い、2家系のみにP-H法と合致するTBG遺伝子の3倍増幅が確認された。残りの5家系で確認できなかったのは、これらで増幅単位が小さいためと考えられた。 4. 遺伝子の増幅単位を明らかにする目的でゲノムのサザンブロットおよびchromosome walkingを行った。Ja1-6の患者で、12種類の制限酵素を用いたサザンブロット解析を行った。全てRFLPを示さず、制限酵素によるDNA断片がカバーする52Kbp内に増幅の段端点の存在しないことが示された。正常者と成長ホルモン単独欠損症を合併するJa1の男児ゲノムDNAからcosmid libraryを作成し、TBGプローブとハイブリするクローンを選別し、さらにchromosome walkingを行うことにより、正常からはTBG遺伝子の上流45Kbp、下流30Kbp、患児では38Kbp、34KbpをカバーするDNA断片を得た。この範囲では両者の制限酵素地図に差異は認められず、更なる範囲拡大を目指している。
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