研究概要 |
1.ヒト正常造血細胞の分化・増殖と細胞周期制御:MEG-O1s細胞株はTPAで巨核球系に分化誘導され細胞周期は停止する.その際,p21CIP1とp27KIP1が誘導されサイクリンE依存キナーゼ活性が抑制されることを示した.そこで定量的RT-PCR法で,ヒト臍帯血CD34陽性細胞由来コロニーを解析した.巨核球コロニーではMEG-O1sと同程度にp21mRNAが上昇した.骨髄の免疫組織染色では,巨核球にのみp21CIP1蛋白が検出された.p27KIP1蛋白はKi-67陰性の骨髄巨核球で検出され,細胞周期停止とともに蛋白が持続的に発現することが示された.リンパ球以外では単球・マクロファージ系細胞にp21CIP1とp27KIP1の低レベルの発現が検出された.2.サイトカインによる細胞周期制御因子の発現制御:液体培養系の解析で,CD34陽性細胞でもサイクリンDおよびp21により細胞周期が制御されていることが示唆された.3.ヒト造血細胞の腫瘍化と細胞周期制御因子:サイクリンD1過剰発現を検出する独自のRT-PCR法で臨床例を解析し,その有用性を示した.NK4a/ARF癌抑制遺伝子座から由来するp16INK4aとp14ARFの発現を同様の方法で解析した.臨床検体では両者の発現欠損に加えてp16INK4aの単独発現欠損が多く,メチル化の重要性が示唆された.また,発現欠損のない症例の多くで,正常組織に比していずれも高発現しており,細胞周期制御異常が血液系腫瘍の腫瘍化に密接に関連していることが示唆された(投稿準備中).一方,p21CIP1とp27KIP1の発現レベルは,細胞株でも臨床検体でも大きな異常に乏しかった.さらに,サイクリンDの過剰発現するマントル細胞リンパ腫および有毛細胞白血病患者の症例をそれぞれ解析し報告した.
|