研究概要 |
1. 白血病細胞株の分化誘導と分化形質発現の制御。 我々が樹立した急性前骨髄球性白血病細胞株HT93を用いATRA添加後と各種サイトカインを併用して培養し、その増殖および分化形質発現を調べた。その結果、ATRA+GM-CSFの存在下では、好中球系への分化形質を有した。一方ATRA+GM-CSF、ATRA+IL3またはATRA+IL5の存在下では、8日目になると8割の細胞が好酸球様の形態を示し、このことは、eosinoperoxidaseの発現や、luxol fast blue染色のデータからも確認された。これらのデータは、血球細胞の分化においては、添加したサイト力インによって、その分化が制御されることを示唆するものと考えられた。 2. 分化に特異的なシグナル伝達の解析 APL細胞株(HT93,HL60)の顆粒球系分化に伴う細胞内SHP-1チロシンホスファターゼの発現の検討を行った。その結果、ATRA添加ではHL60,HT93両者とも顆粒球系への分化を認め、それに伴いSHP-1の発現および活性増加が認められ、DMSO添加ではHL60においてのみ顆粒球分化とSHP-1の発現および活性増加が認められた。顆粒球分化、増殖抑制とSHP-1発現とが密接に関連していることが明らかになった。 3. Basophil,Eosinophilにおけるperoxidase 我々は、immature basophil cell lineとしてKU812-Fを用いて、IL3,GM-CSF等の添加による、basophil分化で発現するeosinophil peroxidaseを証明した。このことはBasophilにおけるperoxidase activityはeosinophil peroxidaseによることを示唆しており、BasophilとEosinophilの分化を考えるうえで示唆に富む知見である。
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