研究課題/領域番号 |
09671109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
血液内科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高山 博史 京都大学, 医学研究科, 助手 (10197220)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1997年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | トロンボポエチン / 血小板 / MAPキナーゼ / プロテインキナーゼC / 細胞骨格 |
研究概要 |
トロンボポイエチン(TPO)は血小板を直接活性化しないが他刺激による凝集および放出反応を亢進させるこを既に明らかにしてきた。このことは、TPOのシグナルが凝集に至る血小板内のシグナルと」クロストークを起こし亢進させていること示唆した。そこで、血小板内のMAPキナーゼ系に着目し、TPOの作用を検討したころ、MAPキナーゼカスケードのうちTPOはShc-Ras-Rafまで活性化するがその下流のMEK,ERKは活性化しないことを見出した。一方で、MEKとERKはトロンビン(Th)やホルボールエステル(PMA)によりプロテインキナーゼC(PKC)依存性に活性化されたが、この活性化はTPOによりいずれも亢進した。しかし、この時PKCの活性化自体は亢進しなかった。従ってTPOは主としてPKCに依存したMEKの活性化をPKCを介さずに亢進させることによりMAPキナーゼ系を亢進させることが明らかになった。MEKの阻害剤であるPD098059(PD)用い、ThやPMAによる血小板凝集およびTPOによる亢進作用に及ぼすPDの影響をみたところ、PDはThやPMAによる血小板凝集に影響を与えず、またTPOによる亢進作用にも影響しなかった。従って、TPOはMAPキナーゼ系とクロストークするものの、この作用は直接血小板凝集に関与しないと考えられた。MEKとERKは未刺激血小板では可溶画分に存在したが、血小板凝集時にはアクチン重合に依存して細胞骨格へと移行した。従って、IPOとMAPキナーゼ系とのクロストークはERKに制御される細胞骨格の機能に何らかの関わりを持つ可能性が示唆された。 つづいて、もう一つのMAPがキナーゼファミリーであるp38 MAPについてもTPOの影響を検討した。P38はトロンビン(Th)刺激により活性化されたがPKCの活性化剤であるPDBuによっては活性化されなかった。また血小板をアスピリン処理してもTh刺激によるp38の活性化は全く影響を受けなかった。TPOはそれ自体p38を活性化しなかったが、Th刺激によるp38の活性化を亢進させた。TPOはまた、Th受容体アゴニストペプチド(TRAP)、トロンボキサンA2アナログ(STA2)、コラーゲン、GPVIのクロスリンキング、ADPやエピネフリン刺激によるp38の活性化も亢進させた。TPO刺激はp38の下流にあると考えられるHsp27やホスホリパーゼA2の燐酸化を生じなかったが、Th刺激によるそれらの燐酸化を亢進させた。P38の特異的阻害剤であるSB203580(SB)はそのような燐酸化を強く阻害した。SBは完全ではないが,ADPやTh刺激による血小板凝集およびTPOによる亢進作用を阻害した。これとは反対に、TPOはPDBu刺激による血小板凝集を亢進させたが、SBはそれを阻害しなかった。以上の結果から、p38MAP系はTPOが他刺激による血小板凝集を亢進させるメカニズムに関与していると考えられた。このようにMAPキナーゼ系とp38MAPキナーゼ系はTPOの刺激伝達機構とクロストークを生じ、後者は特に血小板機能に関与していることが明らかとなった。
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