| 研究概要 |
ヒトの造血器腫瘍の一つである骨髄腫の発癌機構を明らかにするべく、骨髄腫細胞で特異的にその発現が欠失しているPax-5遺伝子につき、転写調節領域のクローニング、構造変異の有無等につき研究した。さらに、Pax-5遺伝子の発現欠失によるCD19分子の発現の消失が、骨髄腫細胞の増殖動態とどのような関連があるかどうかも検討した。骨髄腫細胞株および患者骨髄腫細胞において、Pax-5遺伝子の5'上流領域も含めてDNA塩基配列上特に異常は認められなかった。さらに、転写調節領域に結合すると予想されるE2A,Ik-1,Sox-4,5,c-Ets-1等の転写因子の発現も特に変異はなかった。しかし、5'上流領域約4kb内のCpG部位は、骨髄腫細胞株および患者骨髄腫細胞では高度にメチル化されていた。骨髄腫細胞におけるPax-5遺伝子発現の特異的欠失は、転写調節領域の高度のメチル化による転写の抑制が示唆された。一方、骨髄腫細胞株KMS-5にCD19遺伝子を導入発現させると、in vitro増殖およびSCIDマウスでの腫瘍形成能が著明に抑制された。このことは、骨髄腫細胞におけるCD19発現の消失は、単にPax-5遺伝子の発現欠失の結果だけでなく、骨髄腫細胞の増殖優位性の獲得に関連している可能性が示された。以上、本研究により、骨髄腫の癌化にPax-5遺伝子の変異は密接に関連していることが示唆された。
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