研究概要 |
遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary haemorrhagic telangiectasia,HHT)は,多発性の末梢血管形成異常とその部位からの反復性の出血を伴う常染色体優性遺伝疾患である.1994年,連鎖解析法によりその病因遺伝子が血管内皮細胞に特異的かつ高レベルに発現しているTGF-βのIII型受容体であるエンドグリンであることが明らかになった.我々は,これまでに見いだしたHHT4家系のうち1家系において,160番アミノ酸残基であるアラニンをコードするコドンであるGCTがアスパラギン酸をコードするGATに変化していることを見いだしている.したがって,本研究では変異エンドグリンのTGF-βシグナル伝達の異常がどのようにしてもたらされているかを明らかにする.全長エンドグリンcDNAはRT-PCRで作製し,変異エンドグリンcDNAはsite-directed mutagenesisで作製した.正常・変異エンドグリンが共に細胞表面に発現されることを細胞免疫染色で確認後,TGF-βのIII型受容体が存在しないMCF7細胞を用いてstable cell lineを確立した.これらの細胞に,癌研宮園博士より供与されたSmad2-flag発現プラスミドを遺伝子導入し,TGF-β添加によりSmad2の核内移行がどのように変化するかを解析した結果,変異エンドグリンでは核内移行が認められなかった.このことは,変異エンドグリンではTGF-βシグナル伝達が正常に行われないことを示しており,我々の同定した変異はHHT発症の病因遺伝子であることが明らかになった.さらに,この異常がTGF-βの変異エンドグリンとの結合の異常のためか否かをcross-linking法で解析中である.
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