研究概要 |
I抗原は、CD34陽性細胞には発現せず単球に発現し、sialosyl-I抗原は、骨髄のCD34陽性のCFU-GM、単球に発現していた。健常ヒトの骨髄細胞からCD34陽性細胞を分離し、G-CSF,GM-CSF,IL-3,IL-6の存在下に培養すると、I陽性CD14陽性とsialosyl-I陽性CD14陽性の単芽球が出現した。健常ヒトの末梢血単球を濃縮し、GM-CSFまたはM-CSF存在下に培養し、macrophageへ分化させると、I抗原の発現は増加したがsialosyl-I抗原の発現は低下した。また、末梢血単球を濃縮し、IL-4,TNFα,SCF存在下に培養し樹状細胞へ分化させると、I抗原とsialosyl-I抗原の発現は低下した。以上から、I抗原は単芽球から単球、macrophageに発現し、sialosyl-I抗原はCFU-GMから単芽球、単球に発現することが明らかとなった。癌化学療法後、G-CSFを投与すると骨髄中のCD34陽性細胞は末梢血に動員されることが知られている。そこで、骨髄中のCD34陽性細胞中のsialosyl-I陽性細胞の割合と、動員された末梢血CD34陽性細胞中のsialosyl-I陽性細胞の割合を比較したところ、動員された末梢血CD34陽性細胞中のsialosyl-I陽性細胞は骨髄中のそれに比して有意に低下していた。この結果から、sialosyl-Iは接着因子として作用している可能性が示唆された。リンパ系細胞における検討では、I抗原は、B細胞の一部、大部分のT細胞、リンパ性白血病細胞に発現していたが、sialosyl-I抗原はリンパ系細胞には発現していなかった。B前駆細胞であるCD34陽性CD19陽性細胞は、I,sialosyl-Iを発現していなかった。I抗原とsialosyl-I抗原の基本構造であるi抗原の血液細胞における発現を検討した。i抗原は、CD34陽性細胞、好中球、単球、リンパ球に広く発現していた。以上から、i抗原は、血液細胞に広く発現しているが、i抗原の分枝型であるI抗原とI抗原にシアル酸が付いたsialosyl-I抗原は、血液細胞の分化に伴い特異的な細胞系列に発現することが明らかとなった。
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