研究概要 |
t(1;3)(p36;q21)転座を持つMDS4症例とadult type CML1症例について、13種類の1p36コスミド・プローブ(tel-FB12-CA5-G7-FD2-CB1-ED8-FD9-G32-AE3-G50-AD8-GG4-PEBP2αC-cen)を用いてFISH法で1P36切断点を検索した結果、MDS症例ではCA5-G7間(1p36.3)、CML症例ではGG4-PEBP2αC間(1p36.1)であった。この結果から、t(1;3)(p36;q21)転座の1p36切断点は疾患により異なっていることが判明した。次にBAC cloneでCA5-G7間のcontig mapを作成した。合計33個のBAC及びPACクローンにより、CA5-G7間のcontigがほぼ完成した。また、症例1ではPAC163G9に、症例24ではBAC737N8に切断点が存在することが判明した。BAC cloneは約170kbであるので、1p36切断点は最大340kb間に散在している可能性がある。現在、これら2つのcloneの全sequencingを行い、全遺伝子の単離を図っている。 一方、Mochizukiらは私達と同様にt(1;3)(p36;q21)転座を持つMDS患者検体から、責任遺伝子の単離を図った(Mochizuki N,Shimizu S,Nagasawa T,Tanaka H,Taniwaki M,Yokota J,Morishita K:A novel gene,MEL1,mapped to 1p36.3 is highly homologous to the MDS/EVI1 gene and is transcriptionally activated in t(1;3)(p36;q21)-positive leukemia cells.Blood 96:3209,2000)。かれらは1p36切断点近傍よりMEL1遺伝子を、3q21切断点近傍よりEVl1遺伝子を単離し、EVI1遺伝子のプロモーターにより、MEL1遺伝子の発現が高進していることが本転座における分子病態であると報告している。私達も2症例でMEL1遺伝子の発現を検討したところ、MEL1遺伝子と同じfamilyに属するが、3'末端がMEL1遺伝子とは異なるPRDM16遺伝子の発現が高進していることが判明した(in preparation)。
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