研究概要 |
造血器腫瘍の症例15例において化学療法後に末梢血に流出する造血幹細胞を採取するために、連続血球分離装置を用いて採取した末梢血単核球分画をCD34抗体とイムノビーズを用いて処理することによりCD34陽性細胞に純化した。2.3x^-10^7/kg(中央値)のCD34陽性細胞を純度91%(中央値)、回収率60%(中央値)で採取分離することができた。10症例にこの純化造血幹細胞を用いて移植を実施し、白血球、血小板、赤血球系の回復を認めた。この回復は純化しない末梢血幹細胞移植時における回復と同じであった。経時的にリンパ球/NK細胞の細胞表面抗原を検索したところ、移植後1ヶ月前後をピークに末梢血中にCD57+,CD8+単核細胞の特異的な増加を認めた。全身放射線照射(TBI)/L-PAMで前処置し、移植後重篤なCMV感染合併後にCD57+、CD8+でアズール顆粒陽性の異型リンパ球増多を認め、8ケ月後でも持続している症例では末梢血リンパ球で染色体異常を2/20に認め、TCRのoligoclonalな再構成バンドを認めるとともにウイルス性出血性膀胱炎、肺結核症を合併するなど免疫不全状態に伴う日和見感染症を合併した。TBIを前処置に用い患者の免疫担当細胞を強力にせん滅させた後のCD34純化幹細胞からのT細胞の再構築は遅延する傾向を示し、純化造血幹細胞とともに純化したT細胞の移植(add-back)が移植後の免疫能の正常な回復のためには必要であると考えられた。 移植後に患者に輸注し悪性リンパ腫の再発を防止するための腫瘍特異的なT細胞クローンの誘導のモデルを確立することを目的として、鼻腔原発NK/T細胞リンパ腫患者からIL-2依存性培養株を樹立した。その性状はCD2+、sCD3-、CD3ε+、CD8-,CD8β-,CD16+、CD56+、CD94+、D158a,b-の表面抗厚でTIA-1.granzymeB陽性であり、EBウイルスのclonalなintegrationがあり、type II latency pattern(LMP-1+,EBNA2-)を呈していた。HLA抗原はA0207,2402,B0702,4601,C0102,C0702,DRB1 0101,0803.DQB1 05,06であり、悪性リンパ腫細胞表面上に表出するEBウイルス抗原を標的とする標的細胞として用いることが可能になった.
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