研究分担者 |
室 かおり 筑波大学, 臨床医学系, 助手 (60301082)
菊池 修一 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (40282355)
平山 浩一 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (10302423)
KOBAYASHI Masaki Institute of Basic Medical Sciences, University of Tsukuba
小林 正貴 東京医科大学, 霞ヶ浦病院, 講師 (10195810)
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研究概要 |
1. ブドウ球菌やある種の連鎖球菌は幾つかのエンテロトキシン(SEs)を産生する.SEsがMHCクラスIIの非多形成領域に結合して、特定のTCRVβ領域の相補的決定部位以外の領域を介して認識され、それにより広範なT細胞の活性化、サイト力インの過剰な放出を生じる.その広範なT細胞活性化により,通常の蛋白抗原の10^5-10^6倍のT細胞を活性化することからスーパー抗原と呼ばれている。本スーパー抗原は胸腺内でのT細胞の成熟過程や自己免疫疾患における関与が証明され,あるいは推測されている. 2. 我々はMRSA感染後、T細胞の広範な活性化とIgA・IgGのPolyclonal activationを来し、糸球体にIgA,IgG,C3の沈着を伴う、急速進行性糸球体腎炎にネフローゼ症候群を伴う新しい腎疾患を報告した。本腎炎で出現するTCR(T細胞レセプター)Vβ陽性細胞のサブセットを検討したところ、スーパー抗原が通常結合するとされているTCRVβ+CD4^-CD8^-細胞及びTCRVβ^+CD^4-CD8^-(double negative:DN)細胞の増加が顕著であり、また病勢とこのTCRVβCD4^+,TCRVβ^+DN細胞の推移が相関した。本疾患のMRSAにはSEs,特にA,C,TSST-1の産生が見られており,特にSECのT細胞活性化のパターンと類似していることから,本疾患はSEが本疾患を惹起する引き金になっているものと考えられる.本疾患は高度のcytokine血症を呈し、興味有ることにはTh1 type及びTh2 type,炎症性cytokineの3者が高値であった.本疾患の中には紫斑を呈するものがあり,従来報告されている紫斑病性腎炎として診断されていた可能性がある. 3. 細菌性スーパー抗原とPBLにおけるB細胞へのhelper activityについてのin vitro)の成績では、(a)正常人末梢リンパ球に各種SEsを加えて培養するとSEに特異的に異なったTCRVβ細胞が数日で著増した.(b)TCRVβ陽性メモリー細胞が数日で著増した.(c)メモリーIgA-,IgG-,IgM-bearing T cellsが有意に増加した.(d)サイトカインプロフィール:Th1サイトカインであるIL-2が初期に著増し,遅れてTh2サイトカインであるIL-10が著増し,明らかにTh2優位になった.in vivoの現象がin vitroで明確に説明された。特に、本腎炎にしばしば検出されたSEC添加時のT細胞活性化状態並びにサイトカインプロフィールと一致していた。 以上をまとめると,MRSA感染により放出されたSEsが特異的なTCRVβを介して活性化され,はじめTh1サイトカインであるIL-2を放出し,IL-10などのTh2サイト力インが優位になり,メモリーTα,γ細胞が増加し,免疫グロブリンのpolyclonal activationを生ずるものと考えられた.
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