研究概要 |
進行性腎障害患者の糸球体上皮細胞(GEC)は、予備実験同様に進行性腎障害例において減少していたが、このGECの減少を考慮するとp125FAKおよびWT1の発現は、正常腎との有意差は認めなかった。透析導入直後の糖尿病による腎不全患者27人の末梢血より抽出したgenomic DNAにおけるwt1の変異は、統計学的有意差を認めなかった。そのため患者尿沈渣からnested-RT-PCR法にてWT1mRNAを同定する新たな方法を開発し、糖尿病性腎症患者において有意にWT1を検出し(投稿中)、その変異を解析している。ストレプトゾトシン腎症およびlprマウス腎組織において、FAK、Cas、などの発現ならびにチロシンリン酸化(Ty-P)の明らかな亢進を認め、MAPK経路の活性化も伴っていた(投稿中)。また腎に発現の多いFAK family kinaseであるCakβの機能をFAKの非存在下で検討した(Ueki,Mimura,et al FEBS letter,1998)。伸展刺激によって培養GEC株FAKのTy-Pは上昇したがその分布はin vivoとは異なり、in vivoにおけるGECと株化GECの違いと考えられた(準備中)。そこでGECの新たな培養法を試み、ある種の薬物(公表前のため、名前は伏せる)をラット新鮮糸球体培養に加えたところ、不可能といわれていたGECの継代培養が可能となった。II型糖尿病自然発症ラット(OLETF)において腎糸球体で当初低下しているFAKの発現とそのTy-Pが蛋白尿出現前に増加してくるが、これは、糸球体過濾過による物理的ストレスの結果と考えられる。アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE-I)高濃度投与群のみにおいてFAKの発現とTy-Pの亢進は抑えられ、尿中蛋白濃度も減少した。ACE-Iの糸球体における効果を分子生物学的に証明する新たな現象である(投稿中)。
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