常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者家系の連鎖解析に用いられてきたマーカーは、本来は、PKD1遺伝子のポジショナルクローニングの際にできるだけ候補領域を狭めることを目的として開発されたものである。したがって、ヘテロ接合体性が低い等の問題点があり、実際の臨床の場での連鎖解析には不十分であった。本研究では、2塩基繰り返し配列を含むいわゆるマイクロサテライトマーカー5種(D16S521、D16S3024、UTR_05049_L33243、D16S3027、D16S423)を新たに検討し、これらと従来用いられて来たマーカーであるKG8を比較した。遺伝子型の同定には、ゲノムDNAを蛍光ラベルしたプライマーを用いてPCR法で増幅し、自動DNAフラグメント解析装置で解析した。健常人50名の100遺伝子型を用いた検討では、D16S3024、D16S3027およびD16S423はへテロ接合体性が0.8以上と高く、従来のマーカーに比べ有用性が高いと考えられた。実際に、ADPKD家系を用いた検討で、D16S3024およびD16S423は連鎖解析に有用であった。また、蛍光プライマーを用いて自動DNAフラグメント解析装置で解析する方法は従来の方法に比較して簡便に施行でき、大量のサンプルの処理に適した方法であると考えられた。 本研究により、実際の臨床に供し得る常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の高感度・高出力連鎖解析法を確立しえたと考える。今後、本法はADPKDの遺伝子型_表現型関係解析、変異解析、非PKD1非PKD2家系のマッピングおよび原因遺伝子のクローニングなどに際して有力な手段となり得ると考えられる。
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