研究概要 |
今回科学研究助成金を頂き、我々は,Fibrinogen(Fbg)をThrombinで処理しFibrin clotを得、2M NaBr液に溶解しFibrin monomer(FM)とし、FMの重合を阻止するためGPRP-peptide(0.5mM)含有TBSを用い、Fbn-monomer(FM)を固相化する新しいアッセイ系を開発した。このアッセイ系での細胞接着活性は(1)RGD-peptideにより阻害された。(2)E-domain(Aα-16-R-C)のMutant Fbg由来のFMには細胞接着活性は認められなかった。以上の事実からFbgが細胞接着活性を発現するためには、Fbgの中央E domainを被覆するAα鎖C末領域(αC)がE domainより遊離し、E domainに連続して存在する接着活性中心の露呈が必須あることを示唆している。Soluble fibrin monomer complex(SF)は基本的にはFMと同様な立体構造上に、Fbg2分子が結合することにより、全く新しい特異的構造(neoantigen)が出現する。本研究室での共同研究者であるSoeらはSFに特異的に反応するモノクロナール抗体(JIF-43)を作製し、assay systemを確立した(Blood,88:2109-2117,1996)。 以上の事実をふまえてSFとFMとの構造相同性より、実際に炎症に伴い、出現するSFが、炎症の代表である、糸球体腎炎でどのような役割を演じているかを検討する目的で、培養メサンギウム細胞のSFへの細胞接着活性を測定した。驚くべきことに、SFはFMに比べて、著明な細胞接着活性がみとめられ、Aα鎖C末領域に存在するRGD細胞接着ドメインを欠損するFragment XとFM複合体には上記活性が認められず、SFでの細胞接着促進活性はFMに結合するFbg側に存在することが判明した。この事実を世界的科学雑誌であるJ.Biol.Chem.に投稿中である(J.Biol.Chem.submitted)。
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