研究概要 |
糸球体内皮細胞(GEC)および頸動脈内皮細胞(VEC)におけるNOSの発現およびNOの産生に及ぼす静的伸展(static stretch)刺激の影響を検討した。伸縮性の高いシリコン膜上に培養したGECおよびVECを,シリコン膜とともに30〜40%の伸展率にて30分間,3時間,6時間,12時間,24時間静的に伸展させ,ecNOSのmRNAレベルをノーザンブロット法およびRT-PCR法にて測定し,非伸展細胞と比較した。その結果,24時間までにおいて非伸展時に比べてecNOSmRNAレベルに有意な変動は認められなかった。一方10%,20%,30%,40%の各伸展率にて24時間伸展させ,ecNOSの蛋白レベルの発現をWestern blot法にて非伸展細胞と比較したところ,GECに対する24時間の静的伸展刺激が,0〜40%の伸展率の間で伸展率依存的にecNOSの蛋白レベルを減弱させることが明らかにされた。そこで次に,伸展刺激によってGECのNO産生が実際に低下するか否かを検討した。あらかじめ24時間30%の伸展刺激を加えたVECに10^<-6>Mのブラジキニンを添加し,細胞内cGMP含量をELISA法にて測定し非伸展VECと比較した。その結果,24時間の伸展刺激をうけたVECでは,ブラジキニンによる細胞内cGMP含量の増加が,非伸展VENと比較し明らかに抑制されていた。これらの成績から,静的伸展刺激をうけたVECではecNOSの発現が低下しており,ブラジキニンの刺激によるecNOSを介したNO産生が抑制されている可能性が示唆された。今後GECについても同様な検討を行い,伸展刺激によるecNOS蛋白の発現低下や,それによる内皮細胞依存性NO産生の低下がみられるかを明らかにしていく予定である。
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