研究課題/領域番号 |
09671187
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
腎臓内科学
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
日下部 守昭 理化学研究所, 実験動物室, 室長(研究職) (60153277)
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研究分担者 |
吉木 淳 理化学研究所, 実験動物室, 研究員 (40212310)
池 郁生 理化学研究所, 実験動物室, 先任研究員 (40183157)
平岩 典子 理化学研究所, 実験動物室, 先任技師 (30200380)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1998年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1997年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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キーワード | 糸球体腎炎 / テネイシン / 創傷治癒 / サイトカン / TGF-B1 / PDGF-BB / 細胞外マトリックス / 遺伝子欠損マウス / サイトカイン / TGF-β1 |
研究概要 |
1) 細胞外マトリックス分子テネイシンに焦点を当て、テネイシン欠損マウスとそのコンジェニックマウスにハブ毒によって実験的糸球体腎炎を誘発したところ、正常群では、病理所見および臨床所見共に時間経過と共にほぼ完治したが、欠損群では悪化し、4ヵ月後には腎機能障害によって全て死亡した。病理所見では、欠損群の糸球体は、線維化が激しく硬化していた。 2) 時間経過に伴う糸球体における種々の因子および細胞増殖変化を測定したところ、欠損群では、メサンギウム細胞の増殖が悪く、これに伴ってPDGF-BBの発現が減少していた。一方、TGF-βは正常群では細胞増殖に伴った発現調節されていたが、欠損群では、時間経過と共にむしろ発現が増加する傾向が観察され、これに伴って、フィブロネクチンや4型コラーゲンの発現量も増加していた。 3) 正常およびテネイシン欠損マウス糸球体からメサンギウム細胞(メ細胞)を単離培養して樹立した細胞株を用いて、この細胞の増殖に対するサイト力インの影響を観察した。正常メ細胞は、PDGF-BBに良く反応して増殖するが、欠損メ細胞は、殆ど反応しなかった。しかし、テネイシン上での培養によって欠損メ細胞はPDGF-BBへの反応性を回復し正常メ細胞と同様に増殖した。一方、これらの細胞増殖は抗-テネイシン抗体によって抑制された。 4) ハブ毒で誘発した実験的糸球体腎炎モデルおよびテネイシン欠損マウスを用いて、テネイシンがメサンギウム細胞の増殖に必要なシグナル伝達を調整していることを示したが、正常マウスにハブ毒によって糸球体腎炎を誘発した後、テネイシン機能を中和する抗-テネイシン抗体を投与すると、対象群では時間経過とともに腎臓の機能が正常に戻るが、投与群ではテネイシン欠損マウスの場合と同様、腎臓の機能低下(アルブミン尿、血中尿素量の増加)が観察された。以上のことより、糸球体腎炎の修復過程においてテネイシンは、メサンギウム細胞の増殖に関連した重要な働きを持っていることが再確認された。 5) テネイシン欠損マウスから樹立したメサンギウム細胞の培養細胞株を用いて、テネイシンのPDGFやTGF-βの受容体発現に対する影響をPCR法を用いて解析したところ、テネイシンは、これらの受容体の発現調節に関与しているらしいことを示唆する結果を得た。 6) 成果の論文発表を行った。 以上、糸球体腎炎の創傷治癒において、テネイシンはサイトカインに対するメサンギウム細胞の反応性を調整するという重要な役割を演じていることが示された。
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