研究概要 |
今年度は、60分間のラット一過性低酸素脳虚血モデルを作成し、低酸素虚血負荷と再潅流時における幼若ラット脳の線条体でのhydroxyl radical(OH・)の発生を測定し,高濃度酸素投与の影響とxanthine oxidase阻害剤であるアロプリノールによるその抑止効果について検討した.日齢7のラットの左線条体にLaser Doppler血流計とマイクロダイアリシスのプローブを留置したのち,左総頚動脈のクリッピングによる虚血と低酸素(8%O2)を60分間負荷した.負荷解除後21%O2を吸入させた群(NORMOXIA;n=7),100%O2を吸入させた群(HYPEROXIA;n=7),負荷前にアロプリノール(135mg/kg,i.c.)を投与し負荷後100%O2を吸入させた群(ALLO;n=6)の3群に分けた.線条体から経時的に採取した潅流液よりOH・濃度の測定を行った.OH・をサリチル酸にトラップさせた化合物である2,3-/2,5-dihydroxybenzoic acid(DHBA)の濃度をHPLCを用いて測定した.局所脳血流はLaser Doppler法で連続的にモニタリングした.低酸素虚血負荷により,線条体血流はいずれの群でも負荷前の約半分まで減少したが,負荷終了後には速やかに負荷前のレベルに回復した.2,3-/2,5-DHBA濃度は,NORMOXIA群では,徐々に上昇し再灌流60分後にようやくそれぞれ前値の131±47%,124±20%に達した.HYPEROXIA群では,再灌流直後速やかに有意な上昇を示し,再灌流10分後にはそれぞれ146±47%,141±30%に達した.ALLO群では,再灌流によるDHBA濃度の上昇を示さなかった.再灌流時の脳での活性酸素の産生は高濃度酸素投与によってさらに促されるが,アロプリノールにはその発生を抑制する効果があることが示唆された.
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