研究概要 |
臓器移植では,graft modificationで抗原性を減弱出来れば,拒絶反応の軽減が可能とされる.そこで小腸移植において,ドナーの全身照射(TBI)または,ドナーへのレシピエント骨髄細胞(BM)移植によるgraft modificationで,抗原性を減弱させ,拒絶反応が軽減可能かを検討するため以下の実験を行なった。 純系ラットBNからLEWまたは,BNからLEWで,ドナーに放射線照射(TBI)またはレシピエント骨髄移植(BM)の後に,全同所性小腸移植を行い,生存日数とGVHD発症日時を比較し,グラフトの抗原性に与える影響を評価した。 (1)BN→LEW群:無処置群の生存日数中央値(MSD)は20日で7匹中2匹は一時的GVHDを示し長期生存したが,すべて拒絶により死亡した。TBI群とBM群のMSDは各12日,15.5日と短縮,GVHDは発症せず全てが拒絶により死亡した。無処置群GVHDラットの移植8日後の組織像はGVHDのないTBI群より拒絶反応が軽微だった。 (2)LEW→BN群:無処置群のMSDは29日で全例GVHDで死亡した。TBI群のMSDは69日と延長し,GVHDを示さず拒絶反応で死亡,BM群のMSDは26日でGVHDを早期に発症し死亡した。 以上の結果から,ドナーTBIはGVHD発症を抑制するが,抗原性は低下せず,致死的GVHDを発症しない系で生存日数は短縮すると考えられた。また,BM移植は抗原性の増強により生存日数を短縮させ,GVHD発症を促進すると考えられた。よって,小腸移植ではドナーのTBlやBM移植によるgraft modificationでは拒絶反応は軽減しないと思われる。
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