研究概要 |
膵癌組織においてはK-ras codon12の点突然変異が非常に高頻度で検出されるが,私共はその変異を促進する因子が膵癌患者血清中に存在することを報告してきた。今回は,その因子の変異促進のメカニズムを解明する為,タンパク質とDNAの代謝に関する基礎検討を行った。すでに,変異抑制作用を示すインターフェロンの場合,培養ヒト細胞におけるアンチバイン感受性のプロテアーゼの活性誘発がその作用の初期の過程に存在することを見出している。そこで,本血清因子前処理後紫外線照射し,^<125>I-Fibrinの分解活性を測定した。膵癌患者血清は,色素樹脂力ラムクロマトグラフィーにより分離分画した。ウアバイン耐性化形質変異の誘導を促進する画分についてPCRとdot-blot hybridization法を用いてK-ras codon12変異の誘導が促進することを確認できた画分については,分解活性の上昇作用のあることが判明した。一方,上記画分処理後紫外線照射し,4時間後のRNAを採取し,RT-Differential display法により複数の遺伝子の情報発現誘導のあることが判明した。 以上の結果から,膵癌患者血清因子は,プロテアーゼ誘発とそれに引き続く遺伝子情報発現の誘導を介して,変異原因子によるK-ras codon12の変異を促進するという変異促進のメカニズムが示唆された。
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