研究概要 |
乳癌における片側アレルの消失(LOH)は17p,17q,13qに高頻度に認められる。16q22-terにも高頻度のLOHが報告されているが、ATBF1遺伝子は16q22.3-23.1に存在しており、細胞分化に重要な因子とされており、乳癌の発生、進行に関わっている可能性がある。 〓 散発性乳癌における17p,16q,13q,17q領域のLOHの臨床的意義: 浸潤性乳癌においてLOHが20%以上の高頻度で認められる部位は17p,16q,13q,17qであり、これら領域のLOHは互いに相関している傾向が認められた。また,組織学的悪性度との関連も認められた。また、予後予測因子としての重要性も示唆された。 〓 非浸潤性乳管癌病変における16q領域のLOHの検討: 非浸潤性乳管癌(DCIS)病変からDNAを抽出し、多領域のLOHを検討した。すべてのmarkerのLOH頻度は浸潤癌で高値であったが、非浸潤癌は16qのLOHの頻度が高く、16qに存在する遺伝子が癌化の初期に働くと推察できた。 〓 乳癌培養細胞、臨床乳癌におけるATBF1の発現: 乳癌培養細胞および手術で得られた乳癌組織よりRNAを抽出し、RT-PCR法によりATBF1のmRNAレベルの発現を観察した。しかしながら、乳癌培養細胞にも、臨床乳癌組織にもATBF1の発現は認められなかった。一方、正常肺組織および肺癌組織にはATBF1のmRNA発現が認められた。この際、ATBF1mRNAの発現レベルが肺癌の組織分類いかんにかかわらず、正常組織と比較して肺癌部分で有意に減少していた。また、in situ hybridizationでは正常気管上皮細胞に特異的にATBF1mRNAが発現していることも確認できた。
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